【2024年12月閉業】ネバダ州Primm、砂漠の州境カジノで味わう「IHOP」パンケーキ

2023年12月26日の昼、きらびやかなラスベガスを後にしてロサンゼルスへと向かう広大なモハベ砂漠のハイウェイInterstate 15(I-15)を南下中、ネバダ州とカリフォルニア州の境界線に位置する街プリム(Primm)に立ち寄りました。
かつてネバダへ入るドライバーたちを熱狂させた一大カジノホテルWhiskey Pete’s(ウィスキー・ピーツ)の敷地内に入ると、どこか哀愁漂う静かなカジノフロアの奥に、青いネオン看板が灯るIHOP(アイホップ)があります。1958年創業の全米屈指の老舗ダイナーが提供する名物のバターミルクパンケーキと、ボリューム満点のアメリカンブレックファストを堪能しました。砂漠の州境に刻まれたロードサイドカジノの栄枯盛衰の歴史ロマンとともに、五感を満たす至福のランチ体験をご紹介します。

店舗・外観(Whiskey Pete’sとPrimmの歴史)

カリフォルニアからI-15を北上し、ネバダ州境を越えた瞬間に目に飛び込んでくるのが、青空高くそびえ立つ「Whiskey Pete’s」の巨大なヴィンテージ看板です。この地・プリム(Primm)は、かつてロサンゼルス方面からラスベガスを目指す無数のドライバーたちが「いよいよネバダに到着した」と歓声を上げ、旅の高揚感を上げたチェックポイントでした。
この街の始まりは1920年代、伝説の密造酒商人(ムーンシャイナー)ピート・マッキンタイア(通称「ウィスキー・ピート」)がガソリンスタンドを開いたことに由来します。その後1950年代にアーネスト・プリム氏が土地を買い取り、1977年に本格的なカジノリゾート「Whiskey Pete’s Hotel & Casino」を開業。「カリフォルニアから砂漠を越えてネバダに入った瞬間、目の前でギャンブルができる」という圧倒的な立地優位性を武器に、莫大な交通流を捉えて大成功を収めました。1990年代には隣接するPrimm Valley ResortやBuffalo Bill’s、大型アウトレットモールも誕生し、砂漠の真ん中に一大エンターテインメント王国が築かれたのです。

青く澄み切った砂漠の空の下、中世のお城を模した白亜のタレットが威厳を放つWhiskey Pete’sの外観。しかし2000年代以降、カリフォルニア州内で先住民族による部族カジノ(Tribal Casinos)が次々と誕生したことで、旅行者が州境まで足を伸ばす必然性が薄れ、さらにラスベガスのメガリゾート化も相まって、プリムの街は徐々にその輝きを失っていきました。時代の波とパンデミックを経て、Whiskey Pete’sのカジノホテルは2024年に惜しまれつつ長い歴史の幕を下ろすこととなります。
そんなロードサイドビジネスの栄枯盛衰を象徴する館内で、今なお旅人たちの胃袋と心を温かく満たし続けていたのが、全米で愛される老舗ファミリーレストラン「IHOP(International House of Pancakes)」です。1958年にロサンゼルス郊外で創業して以来、60年以上にわたりアメリカの朝食文化を牽引してきた大御所チェーン。少し静まり返ったカジノのフロアから一歩入れば、そこには古き良きアメリカの温もりあふれるダイナー空間が広がっていました。

カジノの薄暗い通路から足を踏み入れると、店内は明るい照明に包まれ、家族連れや長距離トラックのドライバーたちで賑わっていました。広々としたボックス席とウッディなテーブルが並び、どこか懐かしいアメリカのロードサイドダイナーそのものの落ち着いた雰囲気が漂っています。
フロアには焼きたてのパンケーキから立ち上る甘いバターの香りと、挽きたてコーヒーの香ばしいアロマが充満。スタッフの方々もフレンドリーで、長時間の砂漠ドライブで少し張り詰めていた心がすっと解きほぐされるような温かいおもてなしを感じました。

行き方

【車でのアクセス】
ラスベガス中心部(ストリップ地区)から南へ、幹線高速道路「Interstate 15(I-15 South)」を道なりに約40分(約65km)直進。ネバダ州とカリフォルニア州の境界直前にある「Exit 1(Primm Blvd)」を降りてすぐ右手に位置しています。
広大な無料駐車場が完備されており、大型車やレンタカーでも安心してアクセス可能。ロサンゼルスとラスベガスを結ぶ大動脈の途中にあり、長距離ドライブの休憩や給油、しっかりとした食事を取る絶好の立ち寄りスポットです。

名称IHOP
住所100 W Primm Blvd, Primm, NV 89019
電話+1 702-679-6577
URLhttps://restaurants.ihop.com/en-us/nv/primm/breakfast-100-w.-primm-blvd-5611
営業時間24時間営業(※訪問当時。カジノホテル閉鎖に伴い現在は閉店)

実食

席に着いて手渡されたメニューの表紙には、香ばしく焼き上げられたビスケットサンドと、湯気が立ち上るIHOPのシグネチャーマグカップの写真が大きくレイアウトされています。「Come hungry, leave happy(お腹を空かせて来て、笑顔で帰ろう)」というブランドのモットー通り、見るだけで食欲が刺激され、これから始まるアメリカンランチへの期待感がいっそう高まります。

メニューを開くと、看板メニューである各種パンケーキをはじめ、卵料理、カリカリのベーコンやソーセージ、オムレツ、バーガー、そしてフレンチトーストまで、アメリカ伝統のダイナーメニューがずらりと並んでいます。
今回は、IHOPの魅力を余すところなく味わい尽くすため、王道の朝食コンボプレート(Breakfast Combo)をオーダー。好みの焼き方を選べる卵料理に、香ばしいミート類、名物のハッシュブラウン、そしてもちろん焼きたてのオリジナル・バターミルクパンケーキがセットになった、まさにアメリカンブレックファストの決定版です。

注文後、しばらくして運ばれてきたのは、IHOPの代名詞とも言える「オリジナル・バターミルク・パンケーキ(Buttermilk Pancakes)」の3段重ね。黄金色にムラなく美しく焼き上げられた生地のトップには、まん丸く絞られたホイップバターがちょこんと鎮座しています。
パンケーキの熱気でバターがゆっくりと表面を滑るように溶け出し、生地にじんわりと染み込んでいく様子はまさに眼福。ナイフを入れると、外側はサクッと香ばしく、中は空気を含んで驚くほどふんわり&もっちり。テーブルに備え付けのメープルシロップをたっぷり回しかけて頬張れば、バターミルク特有の爽やかなコクとシロップの濃厚な甘みが口いっぱいに広がり、思わず笑みがこぼれる至福の美味しさです。

甘いパンケーキのお供に欠かせないのが、IHOPのロゴが愛らしく描かれた白いオリジナルマグカップに注がれた「ハウスブレンド・ホットコーヒー」。日本には無いIHOPのロゴか描かれた貴重なこのマグカップを売ってくれないかと聞きましたが、販売はしていないとのこと。残念ながら断念しました。
熱々で淹れたてのコーヒーは、アメリカンダイナーらしい軽やかですっきりとした飲み口ながら、奥に香ばしいロースト感がしっかりと感じられます。パンケーキの甘美な余韻を心地よい苦味でリセットしてくれ、何杯でもお代わりしたくなる抜群の相性。カップを両手で包み込みながらすする一杯は、砂漠のドライブ旅の疲れをじんわりと癒やしてくれます。

そしてメインプレートには、アメリカのダイナー文化が凝縮された贅沢なご馳走が美しく並びます。
プルプルの黄身が鮮やかな2つの目玉焼き(サニーサイドアップ)にフォークを入れると、濃厚な黄身がとろりと溢れ出します。噛むほどに旨味とスモーキーな燻製香が弾けるカリカリのベーコン、ハーブとスパイスが肉の力強さを引き立てるジューシーなポークソーセージ。そして極細に刻まれて表面がキツネ色にクリスピーに揚げ焼きされたハッシュブラウンは、外はザクザク、中はホクホクの絶妙な食感です。
塩気と旨味にあふれるソーセージやベーコンを味わい、とろける卵を絡め、合間にシロップが染みた甘いパンケーキを頬張る――このアメリカならではの「甘い×しょっぱい(Sweet & Savory)」の無限ループは、一度ハマると抜け出せない魔性の美味しさでした。

おわりに

かつて州境のオアシスとして多くの旅人を迎えたWhiskey Pete’s。周囲のカジノフロアに漂う少しノスタルジックで寂しげな空気感とは裏腹に、IHOPの店内に満ちる温かいもてなしと変わらぬ伝統の味は、訪れるドライバーたちの心とお腹を確かに満たしてくれました。
華やかなラスベガスのストリップとは一味違う、アメリカのロードサイドカルチャーや栄枯盛衰の歴史ロマンに思いを馳せながらいただくパンケーキは、ロードトリップならではの忘れられない旅情を運んでくれます。I-15をラスベガス〜ロサンゼルス間でドライブする方や、古き良きアメリカのダイナーと街道の歴史を肌で感じたい方に、心からおすすめしたい名店です。
この日のドライブはこちらの記事でご紹介いたします。
私の主観でのリピート評価4段階は以下の通りです。

★★★素晴らしい、リピート確定
こちら→★★☆また来たい
★☆☆普通
☆☆☆微妙

この旅行の記事一覧はこちらからご覧いただけます。アメリカ・カナダ・メキシコ(2023年12月23日~2024年1月2日)

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